the PIXEL MAGAZINE

INTERVIEW ARTIST #渋谷員子 #Zennyan 2022.09.01

スクウェア・エニックス 渋谷員子×ピクセルアーティスト Zennyan ドット絵対談 Part1

ShibuyaPixelArt2018コンテスト最優秀賞受賞者 Zennyan氏と 『ドット絵の匠』スクウェア・エニックス 渋谷員子氏による対談コンテンツ第1弾!

RPGの世界観

Zennyan じゃあよろしくお願いします。 まずは前回のコンテストで賞を頂き、ありがとうございました。 絵を覚えていただけて本当に嬉しいです。
渋谷員子 静かな、シーンとした感じが印象的でしたね。
Zennyan ぼくが一番最初にプレイしたRPGがファイナルファンタジー(以下、「FF」という)の6だったんですよ。
渋谷員子 (スーパーファミコンの最後に)ギリギリ間に合ったんですね!
Zennyan FF6が初めてやったRPGだったというのもあって、ぼくの中のドット絵の原風景だったりして、特に世界観も寂しいというか少し暗いイメージがあって。
渋谷員子 若くて多感な頃にはちょっと憧れる世界観ですね。 FF6のキャラクター達は、それぞれ悲しみや切ないエピソードを持っていたりするのも刺さりますよね。
Zennyan そうですね。ただ、ぼくは小学生だったので怖かったんですよね。
渋谷員子 小学生だと怖いかもしれませんね。画面も暗いし
Zennyan あ、旅って辛いんだなと印象を受けて。

絵を描く者がとおる暗い世界

Zennyan RPGって楽しい冒険みたいなものだと思っていたんですけど、少年漫画みたいな明るい雰囲気と違って少し寂しいし悲しいお話もいっぱいあるし世界も崩壊しちゃうし。 その影響が残っていたのか、あのコンテストに出した作品も滅びた渋谷みたいなものがあって、自分の中でFF6の世界観が残ってる部分だなと思いました。
渋谷員子 絵を描く者なら大半の人が一度は行く世界なんですよね。人類が滅びた後や荒廃した世界観とか、ハッピーじゃないものを描きたくなる時が。私も高校生の時はファンタジーやSFの世界に傾倒していて宇宙や時空や妖精やら難しい事ばかり考えては妄想していました。 魔列車(※1)は幽霊が出てくるし、ケフカ(※2)は奇妙でなんとなく気持ち悪かったでしょう。
※1)『ファイナルファンタジーⅥ』に登場する乗り物、もしくはモンスター。
※2)『ファイナルファンタジーⅥ』に登場する敵キャラクター(ラスボス)。
Zennyan あ、でもコミカルでした。ピエロみたいな感じで。 小学生だったのでそこまで闇に気づかなかったのかもしれないですね。
渋谷員子 ケフカはピュアな狂気みたいなものを全面的に出そうと思って。最初から狙って描きました。 今まで描いてきたFFのキャラクターで誰か一番気に入っているかと良く聞かれるのですが、いつもケフカと答えています。 かっこいいとか、かわいいキャラクターはとても描きやすいんですが、ケフカは精神的に複雑なキャラクターで、制御できない幼稚性もある。その奇妙な感じをドットで表現できないかなと考えて描きました。

スクウェア・エニックス 渋谷員子×ピクセルアーティスト Zennyan ドット絵対談 Part1

Zennyan ケフカのキャラクターって、どうやって作っていったんですか?
渋谷員子 まず最初に企画で世界観、シナリオを作り、登場人物のプロフィールを天野喜孝(※3)さんに渡します。名前とか年齢とか性格はこんな感じ。というオーダー表です。 当時、私は天野さんと直接やりとりしていて、アトリエに行ってイメージの打ち合わせをしたりしていました。そして完成した絵を見ながらドットを打っていきます。天野さんの作ったキャラクターをどういう風にドットに落とし込むかいろいろ考えながら。ケフカの動きはちょっとコミカルにしようと思って、びっくりしたときのポーズは「シェー」にしようと最初から決めてました(笑)。
※3)画家、キャラクターデザイナー、イラストレーター、装幀家。『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクターデザインを担当し、舞台美術や衣装デザインも手がける。
Zennyan 「シェー」でしたね(笑)表情豊かでしたよね、動きとか。
渋谷員子 かわいいでしょ。
Zennyan 笑い声とかいまだに覚えています。
渋谷員子 あれは、サウンドの人たちのおかげです。印象的な「ヒャヒャヒャ!」は忘れられないですね。
Zennyan そうですね。でも、子供の頃プレイしていてストーリーが基本的には寂しくて辛かったんですけど、ちびキャラとかコミカルな動きとかそういう演技が入ることでかなり救いになって、継続のモチベーションになってたなっていう記憶があります。

ドット絵の演技

渋谷員子 FF5から、手を振ったりうなづいたりという演技が入るようになって。FF6からはフィールドのキャラのサイズも大きくなり作業量が増えましたが、小さいながらも表情豊かになり、劇的にお話に入り込めるようになりました。お芝居をつけているのは企画の人なんですが、どういうシーンでうつむくとか、手を振るとかは私も想定しているんですけど、思いもしない組み合わせでお芝居させてくるのが面白かったです。デバッグ(※4)しながら、あれ!このポーズをこんなところで。。。という驚きが楽しかった。
※4)コンピュータプログラムや電気機器中のバグ・欠陥を発見および修正し、動作を仕様通りのものとするための作業。
Zennyan 動き自体は、描いた絵をどう使われるかは分からなかったんですね。 ドット絵のアニメーションや演技っていうのはすごく心に残ってて、今でもいいなって思うんですよ。 ドット絵なのでちょっと記号的で、完全に演じるって事は出来ないんですけど、人形劇的に喜ぶ時にちょっと飛び跳ねるとかそういう表現がすごくいいし、ストーリーが乗っかってくるとその動きだけで本当に楽しくなったりとか感動しちゃったり、うつむいてるとほんとかわいそうに見えたりとかするのが、なんか日本独特な感じもしたんです。能とかそういうものに近い。動きをすごく制限するじゃないですか舞とかもただ手がバタバタするだけで舞を表現していたりとか、それに近いような想像力を掻き立てる演技みたいなのがすごい好きです。
渋谷員子 いいですよね。 遊んでる人たちがそれぞれいろんなことを想像してくれれば良いと思っています。 ドット絵は簡単な動きしかしないけど、頭の中ですごいムービーが流れていてほしいですね。 最小の動きの中で、イメージを膨らませてくれたら嬉しい。
Zennyan すごい心に残っています。キラキラする涙の表現とか。
渋谷員子 エフェクト使ってキラキラさせているんですよね。
Zennyan ほんと工夫と知恵というか。
渋谷員子 演出が本当に上手でしたね。一回しか使わないイベントで絵の容量を増やすわけにいきませんから企画の人も相当考えていたと思います。

スクウェア・エニックス 渋谷員子×ピクセルアーティスト Zennyan ドット絵対談 Part1

ゲームのドット絵の制約

Zennyan FF6で印象的なのがあって、空がシンメトリーになっているとこがあって、あれは節約ですか?
渋谷員子 節約です。
Zennyan シンメトリーって神秘的に見えるんですよね。宗教美術とかでもシンメトリーなものって多いので。 だからあの、異様な空っていうのがめちゃめちゃ覚えています。
渋谷員子 背景はパーツを作って、その組み合わせで違うかたちにはしてるんですけど、面積が大きい場合にはつなぎ目が目立ってしまいますね。でもそのつなぎ目もデザインしてしまうのはデザイナーの腕のみせどころじゃないかな。
Zennyan そうだったんですね。それが逆にすごく心に残っています。
渋谷員子 それが容量がない時代の良さですよ。少ない容量で見栄えの良い絵を描く。デザイナーはやりくり上手でなければなりません(笑)

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