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2024.12.07
8bitcafe ナヲ 特別インタビュー Part3 19年にわたり愛され続けるゲームバーが“8bit”である意味
Interviewer: 坂本遼󠄁佑
今、日本のみならず海外のゲームファンからも注目を集め、新宿三丁目の“隠しステージ”と呼ばれるバー「8bitcafe」。2005年のオープン以来、多くのアーティストたちから愛され続け、コロナ禍もファンの支援で乗り越えてきた、マスターのナヲ氏に特別インタビュー! 80年代のサブカルチャーをコンセプトに、レトロゲームの魅力を発信する8bitcafeの文化的価値とは——(文=坂本遼󠄁佑|Ryosuke Sakamoto)
YMCKなどのアーティストとの繋がり
坂本 | 80年代の漫画やアニメだけでなく、チップチューンなどのゲーム音楽好きも多い8bitcafeですが、ナヲさんもなにか音楽活動をされていたんですか? |
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ナヲ | そうですね。中学生の頃には、友達の家にドラムセットを持ち込んで、バンド活動をしていました。高校生になってからは、自分たちでスタジオを借りて練習をして、学校の文化祭などで演奏するようになって。 |
20歳の頃からは、ゴリゴリのフリーソウルバンド、正統派ギターポップバンド、路上ライブのアバンギャルドなピアニカバンド、バキバキの現代音楽バンド、チップチューンでカラオケするバンド、バイオリンでゲームミュージックやるバンドなど、今までずっとなにかしらの音楽活動はしてきています。 |
80年代後期、ぼくが高校生くらいの頃には、深夜のテレビ番組「イカ天」がやっていたり、BOØWYやBUCK-TICK、JUN SKY WALKER(S)、THE BLUE HEARTS、UNICORN などのバンドが流行っていたり、友達の間でも音楽に興味がある子が多かったですね。 | |
坂本 | バンドブームの真っ只中ですもんね。 |
ナヲ | その後は、DJカルチャーにも手を伸ばしはじめて。ネオアコや、ギターポップ、フリーソウル、アシッド・ジャズのレコードを聴いたり、ピチカート・ファイブやU.F.Oなどの“渋谷系”の楽曲にハマったり、さまざまなジャンルの音楽に傾倒していきました。 |
坂本 | 今も音楽活動を続けられているんですか? |
ナヲ | 8bitcafeでは半年ごとに周年イベントを開催していて。1.0、1.5、2.0、2.5、3.0周年と、0.5が増えるたびに毎回盛大にやっているんです。そこに、ぼくもアーティストのひとりとして参加して、歌ったりバイオリンを弾いたりしています。 |
坂本 | 8bitcafeの周年イベントには、他のアーティストも参加されるんですか? |
ナヲ | さまざまなジャンルのアーティストが出演しています。過去には、YMCKさんやna<1ms:さんなどに演奏していただいているし、ピクセルアーティストのm7kenjiさんにもVJとしてご出演いただいています。今回は初出演で、TOKYO NO.1 SOUL SETのBIKKEさんにもご出演していてだきます! |
坂本 | まさに豪華メンバーですね。YMCKさんが出演されるようになった、最初のきっかけはなんだったんですか? |
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ナヲ | 8bitcafeをオープンした1週間後くらいに、YMCKさんのマネージャーをやっている方が飲みに来てくれたんです。 |
坂本 | それまで面識があったわけではなく? |
ナヲ | まったくないです。ただ80年代のサブカルのバーに興味を持っていただいたようで、同じ趣味のお兄さんと一緒に飲みに来てくださって。 |
そしたら、次の日にアルバム『ファミリーミュージック』の発売を記念して、近くのタワレコでインストアライブが開催される予定だったので、マネージャーの方が「よかったらおいでよ」と誘ってくれたんです。 |
坂本 | なんという強運、、、。 |
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ナヲ | そこで、初めてYMCKさんのライブを観て、すごい人が居る!と感激しました。すると、なんとその日の夜にYMCKさんご本人も飲みに来てくれて。 |
“16連射”で知られる高橋名人らとともに、8bitcafeでイベントの打ち上げをされていったんです。その時の繋がりでYMCKさんには、今でも8bitcafeの周年イベントにご出演していただいています。 |
自分が店を始めたことで、どんどん世界との繋がりが広がっていく、という感覚を最初に感じた日でした。わずか1週間にして(笑) | |
坂本 | まさに偶然とも思える必然が生んだ繋がりだったんですね。 |
ナヲ | 他にも、さまざまなアーティストの方々に、8bitcafeの周年イベントに出演してもらっているのですが、みなさん人との繋がりのなかで知り合ったり、お客さんの紹介で仲良くなったりした人が多いです。 |
コロナ禍での経営を救ったファンからの支援
坂本 | 2020年には、コロナウイルスの感染拡大で、飲食店はどこも厳しい状況下にありましたが、8bitcafeはどうやって営業していたんですか? |
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ナヲ | 夜の時間帯がメインのお店なので、基本的には都の要請に従って、お店を閉めていました。でも、どうしても家賃の問題などで経営が立ちいかなくて。クラウドファンディングで、支援を募ったりもしていました。 |
坂本 | なにか返礼品なども用意されたんですか? |
ナヲ | 応援ドリンクチケット5〜100杯分とか、YMCKさんやMCUさんがわざわざ応援の為に制作してくれた、8bitcafeのテーマソングのダウンロード販売などが一番の目玉でした。あと、「ナヲさんに10杯おごる」という画像のデジタル販売とかですかね。 |
坂本 | 「ナヲさんに10杯おごる」という画像を返礼品にしたんですか? |
ナヲ | 他にも1杯や5杯をおごる画像も制作して、8bitcafeの支援として販売してみたんです。購入いただいた方には、YouTubeの配信中にお礼を言いながら、僕がお酒を飲むというサービス付きで(笑)そしたら、快く画像を買ってくださる方もたくさんいて。 |
先が見えないキツい時期を応援していただいた皆さんには、今でも本当に感謝しかないです。その後、お店のお客さんだけでなく、まだ来店されたことのない人や、海外のゲームファンからも、たくさんの支援をいただけるようになって。どうにかコロナ禍でも8bitcafeを続けることができました。 | |
坂本 | 海外の方はどうやって支援のことを知ったんでしょう。 |
ナヲ | SNSで少し話題になったんです。Twitter(現・X)で1000以上のリツイートがあって、世界中から思っていた以上の反響をいただけました。 |
坂本 | みなさん8bitcafeの文化的な価値に気づいていたんですね。ここにある貴重な品々はどれも文化財レベルのお宝、閉店してしまったら悲しむ人がたくさん出てしまうと。 |
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ナヲ | そのおかげで、8bitcafeを19年も続けることができました。 |
坂本 | 19年は長いですね。今回も19周年のイベントを開催されるんですか? |
ナヲ | 12月14日に開催する予定です。DJやライブだけでなく、さまざまな企画を計画していて。アーティストの私物を買えるフリーマーケットなども開催しようと思っています。 |
坂本 | アーティストの私物を買えるとは? |
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ナヲ | 前回の周年イベントから始めた企画で、アーティストが私物を持ち寄って、会場内で欲しい人たちに販売するんです。アーティストのファンからすると貴重なお宝ですよね。これも現場ならではの楽しみのひとつだと思います。ぼくも私物を出品する予定なので、ぜひ見に来てください。 |
あと、芸能界NO.1のゲームマニアであるMCUさんやYMCKさんの演奏を、会場だけでなくYouTubeで生配信もする予定なので、それぞれ自分に合った楽しみ方を見つけてもらえればと思います。が、、、やはり一番熱いのは現場です! できれば現場に足を運んでいただき、その熱気を感じていただきたい! そして、一緒に8bitcafeの19周年を祝っていただけると嬉しいです! | |
坂本 | 今年の最後を締めくくる見逃せないイベントですね。 |
8bitcafeのナヲにとって8bitとは
坂本 | 最後に、ナヲさんにとって“8bit”とはなんですか? |
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ナヲ | ぼくにとって8bitとは“80年代の象徴”です。あの頃は、バブル景気だったこともあり、日本全体に元気が有り余っていた。今みたいな“コンプライアンス”という概念もなかったので、みんな好き勝手にやりたい放題していて。 |
新しいカルチャーが生まれる時って、良かれ悪かれそれだけの爆発力があるんですよね。これまでにないものを生み出そうというエネルギーに溢れているので。そんな80年代のカルチャーを代表するものとして8bitがあるのだと思います。 |
店舗情報
8bitcafe
住所 東京都新宿区新宿3-8-9 新宿Qビル 5F
時間 19:00~24:00
定休 火曜日
TEL 03-3358-0407
https://8bitcafe.tokyo
- 8bitcafe
- Interviewer: 坂本遼󠄁佑 the PIXEL magazine 編集長。東京都練馬区出身。大学ではアメリカの宗教哲学を専攻。卒業後は、出版社・幻冬舎に入社し、男性向け雑誌『GOETHE』の編集や、書籍の編集やプロモーションに携わる。2023年にフリーランスとして独立し、現在はエディター兼ライターとして活動している。