ピクセルアートの世界に泊まる!? HOTEL ANTEROOM KYOTOの期間限定コンセプトルーム
京都のホテル「HOTEL ANTEROOM KYOTO」が、期間限定のコンセプトルーム「ピクセルアートルーム」の宿泊プランを開始! nakajima氏やヘルミッペ氏、hako 生活氏、m7kenji氏、モトクロス斉藤氏という豪華メンバーが、それぞれデザインを手がけた客室はどれも必見だ。(文=坂本遼󠄁佑|Ryosuke Sakamoto)
いつでもアートに触れられる“体験型ホテル”
かつて学生寮だった築23年の建物をコンバージョンし、2011年にホテル&アパートメントとしてオープンした「HOTEL ANTEROOM KYOTO」。“365日アートフェア”というコンセプトのもと、アート作品の販売や展示会の開催などを行う、今京都の観光客に人気のアートスポットだ。
そんなHOTEL ANTEROOM KYOTOでは、同じく京都で開催されているインディーゲームの祭典「BitSummit」と連動して、現代アートとインディーゲームの相互の魅力に迫る展覧会「art bit - Contemporary Art & Indie Game Culture - #4」が開催されている。
ホテル内にあるギャラリー「GALLERY 9.5 」に並べられた作品は、ゲームクリエイターの飯田和敏氏や漫画家の西島大介氏など、どれも著名なアーティストのものばかり。現代芸術家のたかくらかずき氏や岡田舜氏、Zennyan氏の作品も展示されている。
さらにart bit展の開催に合わせて、5組のアーティストによる期間限定コンセプトルーム「ピクセルアートルーム」での宿泊プランも開始された。独自の世界観を持つアーティストたちが、それぞれの個性や感性を活かしてデザインした客室は、ここでしか体験することができない特別な宿泊空間を提供している。
今回は、そんな「ピクセルアートルーム」の5つの部屋を、アーティストのコメントとともに特別に紹介しよう。
nakajima×コンセプトルーム
関西を拠点に活動するゲームクリエイターのnakajima氏は、2017年にリリースされたゲームアプリ『From_.』をテーマに、“郵便屋さん”が人々に手紙を届けるストーリーを表現。ほのかに香るヒノキの木製ブロックで作られた立体作品や、ゲームの世界観をモチーフにした絵画作品などが飾られている。
部屋の中央にあるテーブルの上には、ゲームで使用されている楽曲を録音したレコードとプレイヤーを配置。音質にこだわったというレコードは、ピアノの生演奏を収録したものなのだとか。nakajima氏がデザインしたジャケットも、インテリアとして置かれているので、じっくりと手に取ってみたい。
「ベッド側とテーブル側の両方の壁にかけたイラストは、どちらもアクリル絵の具を使って描いています。ベッド側の壁にある3つのイラストは、ゲームに出てくるワンシーンを再現していて、黒い背景に手書きで青のドットを打ちました。
他にも、ゲームの世界観を演出するために、部屋全体をブルー系の色でまとめて。ランタンやレターセットなど、ゲームに関連するアイテムも置いています。『From_.』をプレイできるゲーム機もあるので、部屋でゆっくりと寛ぎながら遊んでみてください!」
ヘルミッペ×コンセプトルーム
多彩なスタイルや作風を持つピクセルアーティスト、ヘルミッペ氏のコンセプトルームのテーマは「旅」。壁にかけられたリソグラフは、過去の作品だけでなくコンセプトルームに合わせて作成した、オリジナルのピクセルアート作品も含まれているという。
渋谷の街並みや大学の施設など、さまざまな情景や建物が描かれている風景画は、実際にヘルミッペ氏が訪れた地がモデルになっているそう。また、テーブル側にかけられた3つの絵の中央には、HOTEL ANTEROOM KYOTOをモチーフにした作品も展示されている。
「リソグラフの手法のひとつに、ランダムに穴ができる版を使うやり方があるんです。刷るごとに違う穴の重なり合いを見ながら、理想のグラデーションができるまで何度も繰り返して。穴の大きさを広げてみたり、ベタ塗りの部分の濃淡も変えてみたり、納得がいく作品になるよう試行錯誤を重ねました。
アンテルーム京都の絵にいる凶暴そうな2匹の野犬。これは、自分のなかに京都の人は少し“怖い”という勝手なイメージがあって(笑)その恐怖からホテルが守ってくれているんです。でも、京都を旅してみると優しい人が多くて、知れば知るほどイメージが変わってくる。そんな旅の心情も表現してみました」
hako 生活×コンセプトルーム
ゲームクリエイターであるhako 生活氏が、2020年にリリースしたアドベンチャーゲーム『アンリアルライフ』。文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門新人賞を受賞したこの人気作は、2021年に期間限定コンセプトルーム「アンリアルルーム」として多くの宿泊者から好評を博していた。
そんなアンリアルルームの第2弾では、アンリアルライフの世界観をより深く味わえるコンテンツが満載。今回のコンセプトルームに合わせて開発されたミニゲーム「VOLTA」のアーケードモードは、HOTEL ANTEROOM KYOTOでしかプレイできない特別仕様なのだとか。
「ゲームに登場する『ホテルくじら』の客室をモチーフにデザインしました。部屋の入り口にある観葉植物は、ゲームの世界を再現するために特別に設置していて。ベッドの横には、しゃべるAI信号機『195』というキャラクターと会話を楽しめる、音声アシスタント機能が付いたデバイスも置かれています。
ゲーム本編にはないキャラクターの表情なども壁に描かれていて、窓に貼られている半透明の街並みのイラストは、4000pxくらいのキャンバスにドットを打ち込みました。この部屋だけのアメニティグッズもあるので、実際に『ホテルくじら』に宿泊した気分を味わってみてください」
また、ホテル1階にある「ANTEROOM BAR」では、営業日のみアンリアルライフの世界をモチーフにしたカクテルも味わえるので、今だけの特別な一杯に大いに酔いしれたい。
m7kenji×コンセプトルーム
ピクセルアーティストのm7kenji氏のコンセプトルームでは、インディーゲームとピクセルアートを見事に融合。映像作品やイラストの制作だけでなく、ゲーム開発にも精通しているm7kenji氏ならではの、遊び心に溢れた自由な空間となっている。
ベッド側の壁に描かれている大きな絵画は、1枚のイラストの上に3つのキャンバス画をかけ合わせ、ひとつの立体感のあるアート作品として旅の“移動”を表現。日光の加減によって色合いがわずかに変わる、窓に貼られたドット絵のイラストも見どころのひとつだ。
「テーブル側の壁にかけた4枚の絵は、リソグラフのイラストに少し凹凸を付けています。見る方向によって立体感がでる質感にしていて、吸収した光を横の側面から発する特殊なアクリル板に挟むことで、自然な光がイラスト全体を包むような演出も加えました。
他にも、ゲームのキャラクターやアイテムをモチーフにしたクッションや、ゲームアプリ『Bugtronica』をプレイできるゲームボーイカラーには、m7kenjiのロゴを入れるなど少しカスタマイズを加えています。小さいお子さんでも遊べるゲームなので、家族との宿泊でも十分に楽しんでいただけると思います!」
モトクロス斉藤×コンセプトルーム
幼い頃から慣れ親しんだヒップホップ音楽の文化をベースに持つピクセルアーティストのモトクロス斉藤氏。今回のコンセプトルームでは、そんなモトクロス斉藤氏らしいどこかの街の路地裏のような、日常の空気を感じさせる世界が広がっている。
グラフィティライターが書く“タグ”や“スローアップ”、壁に貼られた“ステッカー”などの要素を取り入れたドット絵のグラフィティアート。窓際に置かれている“ラジカセ”は、モトクロス氏が自らセレクトしたものなのだとか。再生のスイッチを入れれば、オリジナルのカセットテープを流すこともできる。
「最初は、コンセプトルーム全体をグラフィティで覆ってしまおうと考えたんです。でも、途中から部屋の窓からグラフィティが見えているカタチにしたくなって。あえてイラストの前にあるアクリル板を1枚ではなく4枚にすることで、窓ごしに隣のビルの壁を眺めている状態を再現してみました。
また、壁にある4枚のイラストは、ディスプレイの映像のように見えるのですが、実はOHPフィルムと写真用紙に印刷した2枚の絵を重ねていて。光を入れると後ろの絵のフレアが浮き上がる仕組みになっています。しかも、2枚の絵の微妙のズレがブラウン管の“にじみ”みたいな質感を演出してくれています」
ホテル内でオリジナルグッズも販売中!
ピクセルアートファンにとって、嬉しいサービスはそれだけではない。今ならフロントの横にあるお土産コーナーで、ピクセルアートルームを手がけたアーティストや、art bit展に参加しているクリエイターたちのグッズやアイテムが販売されている。
コンセプトルームで使用されているイラストのステッカーやクリアファイル、クッションやレターセット、アーティストのオリジナル楽曲を収録したCDやカセットテープなど、宿泊の記念に買っていけば良い旅の思い出になることだろう。
古都・京都の街をのんびりと歩いたあとは、現代アートとインディーゲームに囲まれて一夜を過ごす。そんな特別な体験ができるHOTEL ANTEROOM KYOTOの「ピクセルアートルーム」で、新たな“出会い”に好奇心をくすぐられる旅をしたい。
開催概要
ピクセルアートルーム
期間 2024年6月23日(日)〜2025年5月31日(土)
場所 HOTEL ANTEROOM KYOTO
住所 京都府京都市南区東九条明田町7番
対象 南館ツインルーム1室(定員2名)、セミダブルルーム4室(定員2名)
料金 6,300円〜※
https://www.uds-hotels.com/anteroom/kyoto
※価格は時期により変動あり。
- hako 生活
- m7kenji
- nakajima
- ヘルミッペ
- モトクロス斉藤