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ARTICLES ARTIST #ジゼル愛華 2025.11.14

ジゼル愛華 特別インタビュー Part4 自らが触れてきた文化の融合を世界に発信していく

Interviewer: 坂本遼佑 

カラフルな色使いで街や少女のイラストを描くピクセルアーティストのジゼル愛華さん。日本のカワイイ文化や現代アートに強い影響を受け、19歳にして銀座の蔦屋書店で個展を開催するなど、その才能はアートジャンルの垣根を超えて注目されている。そんな今話題の若手作家であるジゼル愛華さんに特別インタビュー! モデルやタレントとしても活動している、現役大学生クリエイターの素顔に迫る。(文=坂本遼佑|Ryosuke Sakamoto)

現役モデルやタレントとしての活動

坂本 ピクセルアーティストとしてだけでなく、モデルやタレントとしても活動されているジゼル愛華さんですが、芸能関係のお仕事をされはじめたきっかけはなんだったんですか?
ジゼル愛華 10歳の時に、原宿で芸能事務所の方にスカウトされたのがきっかけでしたが、当時はあまりモデルやタレントの仕事には興味がなかったんです。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part4 自らが触れてきた文化の融合を世界に発信していく

坂本 では、なにが一番の動機だったんですか?
ジゼル愛華 当時は、ブラジルから日本に移住しはじめた時期でもあったので、日本のゲームやアニメなどのカルチャーに触れられることが、私にとって一番の魅力だったんです。
坂本 確かに、芸能関係のお仕事ならいろいろなカルチャーとコラボレーションできますもんね。
ジゼル愛華 でも、モデルとしてさまざまなお仕事をいただけるようになって、ファッションやコーディネートなどにも興味を持つようになりました。
例えば、着物の撮影の時には、それぞれの柄の意味合いなどを学ぶことができて、ドット絵のカラーパレットの組み合わせなどの勉強になりました。また、モデルのポージングなどもイラストを描く時の参考にしています。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part4 自らが触れてきた文化の融合を世界に発信していく『沼ハマ Untitled』(2023)

坂本 自らがモデルとして撮影されることで、作品になる側の人の感覚も掴むことができる。
ジゼル愛華 また、アイドル歌手として音楽活動もしていたので、楽曲の制作がドット絵に良い影響をおよぼした部分もあります。
坂本 まさにピクセルアートと他のカルチャーの融合ですね。

日本の浮世絵の文化とピクセルアートの融合

坂本 2025年には、銀座の蔦屋書店で個展「Time Traveler ジゼル愛華浮世絵乃夢噺」を開催されましたが、個展を開くきっかけはなんだったんですか?
ジゼル愛華 ちょうどNHKの大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」が放映された時期だったので、日本の浮世絵の文化とピクセルアートを融合させようと思ったんです。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part4 自らが触れてきた文化の融合を世界に発信していく『Big Waver』(2025)

坂本 それで、タイトルに「ジゼル愛華浮世絵乃夢噺」があったんですね。ピクアルアートの作品に、浮世絵の絵柄を組み込んだ挑戦的な試みでしたが、制作されていてどのような感想を持ちましたか?
ジゼル愛華 これまで日本のポップカルチャーを表現した作品は多く描いてきたのですが、同時に日本の“浮世絵”や“江戸文化”にも興味を持つようになって。
浮世絵の独特な技法などを再現できるように何度も練習しながら、自分自身のブラジルで生まれ育ったルーツや、南米のカルチャーも上手く表現できればと思い作品を制作しました。
坂本 葛飾北斎の『富嶽三十六景』に出てくる「神奈川沖浪裏」に、ブラジルのコルコバードのキリスト像が描かれていたり、現代の東京駅の風景に歌川広重の『東海道五拾三次』の人々がいたりと、オリジナリティ溢れる作品でしたよね。
ジゼル愛華 まさに、タイムトラベラーになった気分で、自分がこれまで経験してきたことと、江戸時代の浮世絵の情景を組み合わせてみました。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part4 自らが触れてきた文化の融合を世界に発信していく『Tokyo Station』(2025)

空間全体を使ったドット絵の世界の創出

坂本 これからジゼル愛華さんが、挑戦してみたい作品やプロジェクトはありますか?
ジゼル愛華 これまでモデルやタレントとしてのお仕事で、さまざまな撮影や取材を受けさせていただいたので、今度は自分がモデルの方々が着る衣服のデザインをしてみたいです。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part4 自らが触れてきた文化の融合を世界に発信していく

坂本 世界に向けて日本のカルチャーを発信できるデザイナーになりそうですね。
ジゼル愛華 あとは、多くの人が行き交う場所のパブリックな作品として、タイル壁画や大画面のサイネージを使った作品も制作してみたいです。
坂本 まさに日本のポップカルチャーを象徴する作品。
ジゼル愛華 実は、浮世絵をテーマにした作品も、BGMとしてボサノバなどの楽曲を流しながら、空間全体で楽しめる展示にしたかったんです。なので、次は空間演出にもこだわったエキシビションにしたくて。
私が生まれ育ったブラジルの文化と、日本のポップカルチャーが融合した空間を、ひとつの作品として展示したいと考えています。
坂本 原宿の“カワイイ文化”やきゃりーぱみゅぱみゅさんに影響を受けている、ジゼル愛華さんならではの空間演出には、世界の人々が注目するのではないでしょうか。いつか国際的なイベントで総合演出を務めて欲しいです。
ジゼル愛華 今回、銀座の蔦屋書店で個展を開催したところ、小学校の時の友達が足を運んでくれて、当時は日本語がわからず言えなかった「ありがとう」と伝えることができたんです。
そんな、多くの人への「ありがとう」を伝えられる場として、自分の作品を展示できたらと思います。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part4 自らが触れてきた文化の融合を世界に発信していく

坂本 ジゼル愛華さんの想いが込もったエキシビションになりそうですね。
ジゼル愛華 また、私のように海外から日本を知った人々にも、日本の良さが伝わる作品を展示していきたいです。
坂本 ブラジルとドイツ、そして日本の文化を受け継いでいる、ジゼル愛華さんらしい発想だと思います。

ジゼル愛華にとってピクセルとは

坂本 最後に、ジゼル愛華さんにとって“ピクセル”とはなんですか?
ジゼル愛華 私にとってピクセルとは“無限の想像世界”です。ひとつひとつの四角いピクセルが、人間の“細胞”みたいな働きをしていて、すべてがまとまり合うことで形づくられていく。
でも、どれかひとつでも失われてしまうと、まったく別のものになってしまうし、それぞれに意味があって結びついている。ひとつの集合体として無限に広がるピクセルアートは、この世界を構成する生き物のように感じられます。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part4 自らが触れてきた文化の融合を世界に発信していく


  •  坂本遼佑
  • Interviewer: 坂本遼佑 the PIXEL magazine 編集長。東京都練馬区出身。大学ではアメリカの宗教哲学を専攻。卒業後は、出版社・幻冬舎に入社し、男性向け雑誌『GOETHE』の編集や、書籍の編集やプロモーションに携わる。2023年にフリーランスとして独立し、現在はエディター兼ライターとして活動している。