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#渋谷員子 #Zennyan
2022.09.01
スクウェア・エニックス 渋谷員子×ピクセルアーティスト Zennyan ドット絵対談 Part2
ShibuyaPixelArt2018コンテスト最優秀賞受賞者 Zennyan氏と 『ドット絵の匠』スクウェア・エニックス 渋谷員子氏による対談コンテンツ第2弾!
なにをやっても通過点
Zennyan |
ところで、渋谷さんは中学生時代にデッサンをやっていたという話ですが、その体験が結構大きいのかなって思っていて。デッサンの本質は描くことより見ることにあって、描き方から入ると怒られたりするじゃないですか。技術を、描き方を先に覚えるんじゃなくて、答えは目の前にあるのだからみて描きなさい。結構そういう思想が渋谷さんの発言からも感じ取れて、例えば、シリーズごとに過去の作品は全く見ずに1から新しい作品を作るとか。さっきのケフカの話でも送られてきたイラストとちゃんと向き合って、そこから考えるとか。やっぱり関係あると思いますか? |
渋谷員子 |
中学、高校とデッサンはしっかり学んでますが、将来絵に関係する仕事につくには基礎になるものができていれば有利というか、何事にも応用が利くのではないかと思っていました。
スーパーファミコンの時代が終わってプレイステーションになってからは、ドットはほとんど描いてないんですね。最後はプレイステーションのサガ フロンティア(※1)だったかと思います。
サガ フロンティアではキャラのモデリング(※2)とモーション(※3)もやっていました。モデリングしてプリレンダー(※4)してそれをドットになおす、という形式でやっていたので、デッサンはそこで役に立っているんですよね。さらにアニメーションを勉強した事がモーションで役に立っている。
デッサンでは上手い下手の問題ではなく、目の前にある物の本質を理解するレッスンだと思っているので、キャラに向き合うと言う点では関係あるかもしれないですね。
デッサンとドットの関係に気付いたのは、モデリングもモーションも経験して、またドットに戻った後です。今までやってきた事がすべてつながった感じがしました。そう考えると私にとってデッサンは30年以上のデザイナー人生を支えてる要素の一つだと思います。 |
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※1)スクウェア(現:スクウェア・エニックス)が1997年7月に発売したプレイステーション用ソフトのRPG。 |
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※2)3DCGの空間内で、キャラクター、道具、背景などを造形する工程のこと。 |
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※3)キャラクターの動作をデザインすること。 |
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※4)プリレンダリング(pre-rendering)の略。事前に生成(レンダリング)されているCGのこと。 |
Zennyan |
スタート地点にあったもの? |
渋谷員子 |
スタート地点ではないですけど。 |
Zennyan |
通過地点にあったもの? |
渋谷員子 |
そうですね。絵を描き始めたその時から、すべて通過地点。 |
Zennyan |
なにやっても通過点。 |
渋谷員子 |
なにやっても通過点。
それは昔、天野さんとお話していて、例えば昔の絵柄が良かったからあの感じで描いてくださいと言われても、自分には通過してしまったものなので、戻りたくないし、もう描けないよとおっしゃっていた事があります。それは私もすごく共感できて。今目の前にある事はすべて通過点にしかすぎない。二度とない瞬間だからこそ真摯に向き合う事が未来につながっていくのだと思います。到達地点はない。 |
Zennyan |
到達地点がない。 |
渋谷員子 |
それは本人次第ですけどね、私にとっては常に現場にいることが大事で、常に上を向いて走り続けようと。クリエイターにゴールはないと思いますよ。なにかを作る人は一生作る人だと思っているので。 |
仕事として、趣味として
渋谷員子 |
私はこの先、作り続けるものが絵じゃないかもしれない。陶芸など焼き物にも興味があります。
インタビューでは言った事がないのですけど、手芸もすごく好きで、小学校の時から着せ替え人形やぬいぐるみを作ったり、母に教わって洋裁や編み物、あとは刺繍もしたかな。手先を動かしてなにかを作ることが 好きだったんですよね、絵以外にも。天然石やビーズで自分でデザインしたアクセサリーも作ります。雑誌やお店で見たものをインスピレーションにして自分カスタマイズしたものを身に着けるのも楽しいですし ね。
私は作る人というよりも表現する人なのかもしれないです。 |
Zennyan |
ぼくは学生時代に伝統工芸やってまして、結局全然違う仕事を選んだんですけど、工芸とドット絵って少し似ていると思うところがあって、自由に絵を描くことに比べるとドット絵って、工芸的、手芸的な感覚があって。 |
渋谷員子 |
工芸、手芸はドットに通じるかもしれませんね。
でも私は趣味ではドットは描かない。仕事なんですよ、やっぱり。 |
Zennyan |
もともと、ゲームはやっていなかったって話ですもんね。 |
渋谷員子 |
そう。絵の仕事をするっていう環境が30数年前はまったく整っていなくて、情報もないしあの頃は絵の仕事にどうし たら就けるかがわからなくて。 |
Zennyan |
たまたまこの仕事に就いたというお話ですが、言われたことをただやっているわけではなくて、いいもの作って やろうという意識はものすごく高い感じがします。 |
渋谷員子 |
でもそれは後の方になってからですかね。最初はひたすら試行錯誤ですから。 |
渋谷さんのドット絵の面白さ
渋谷員子 |
当時のドット絵って、見本がなく結局自己流だったんです。16×16の単位の中で描く作業。他のゲームメーカーさんたちも同じだったと思いますが。 |
Zennyan |
でも、すごくこだわって描いているというか、洗練させているなと思いました。 |
渋谷員子 |
でもやっぱり、ドット絵がどういうものかも知らず、普通にイラストレーションを描くのが好きだった人がこの小さいサイズで点々でどうやって??と、どうしていいかわからない感じはありましたよ。 |
Zennyan |
そうですよね。戸惑いも大きかった? |
渋谷員子 |
3色しかないんですか??ドットって?16進数ってなんですか??という感じ。
文句言っても状況は変わらないので、とりあえずあれこれやってみたら。なんとなく出来てしまった(笑)。 |
Zennyan |
FF1のマップのお城の描写とかすごく面白くて。
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渋谷員子 |
面白いですか(笑)。 |
Zennyan |
面白いというか、すばらしいと思います。街とか城ですね、城を描くときに普通だったら記号っぽくしちゃうんですよ。この地面の土とか草の表現を省略しちゃうと思うんです。でも実際のお城だったらこういうものがあるだろうとリアルに想像していて。当時の他のゲームは、記号を綺麗に作って終わりっていうものが多かったので、そういうところがリアルだなって思いました。 |
渋谷員子 |
良くも悪くも私が他のゲームを知らなかったから。かな。 |
Zennyan |
だからこんなものでいいんだろうという基準がなかったということですかね。 |
渋谷員子 |
自分のイメージの中にあるお城をどうやって再現するか、だけです。
確かにこれは当時はあまり見かけなかった表現ですね。(FF1のマップの芝生の絵を見ながら) |
Zennyan |
そうですよね。 |
渋谷員子 |
どうしても馴染ませたい気持ちがあったんでしょうね。苦肉の策ですね(笑) |
FF DOT. -The Pixel Art of FINAL FANTASY- © 2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
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