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#m7kenji
2024.11.29
m7kenji 特別インタビュー Part3 インディーゲームの中で表現される“頭の中”の世界
イラストレーター、映像作家、ゲームクリエイター、VJなど、さまざまな“顔”を持つピクセルアーティストのm7kenji氏に特別インタビュー! 今年、2人展「雲を掴むピクセル」や7人展「ピクセルパッチパンチ」だけでなく、7年ぶりとなる2度目の個展「Pulse into Flow」の開催したことでも話題となった、m7kenji氏の創作活動の裏側とはーー。(文=坂本遼󠄁佑|Ryosuke Sakamoto)
衝撃を受けたスーファミのドット絵
坂本 | ピクセルアーティストやチップチューンのVJだけでなく、ゲームクリエイターとしても活躍されているm7kenjiさんですが、初めてプレイしたゲームソフトはなんだったんですか? |
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m7kenji | 最初は「ゼルダの伝説」シリーズです。ぼくは“ゲームボーイ世代”なので、よく『ゼルダの伝説 夢をみる島』で遊んでいました。あとは『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』ですかね。 |
坂本 | 自分も『ゼルダの伝説 ふしぎのぼうし』でよく遊んでいました。 |
m7kenji | あれはゲームボーイアドバンスの作品ですよね。それよりも前のシリーズ作です。 |
坂本 | まだドット絵に近い画質だった時代の作品ですね。 |
m7kenji | ゲームボーイカラーが発売される前だったので、画面に表示される映像の色もまだ白黒でした。 |
坂本 | 他のゲーム機では遊んでいなかったんですか? |
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m7kenji | 『ワンダースワン』などの携帯型ゲーム機でも遊んでいました。あとは中学3年生の時に、双子の弟がスーパーファミコンを拾ってきたことがあって。 |
坂本 | ゲーム機本体を拾ってきたんですか!?!? |
m7kenji | どこかの家庭からゴミとして捨てられていたものを見つけてきたんです。当時は、プレイステーションⅡなどが発売されていた時代、ぼくたち兄弟は『ファイナルファンタジーVI』や『クロノ・トリガー』で遊んでいました。 |
坂本 | よくゲームソフトを持っていましたね。 |
m7kenji | ゲームソフトは、友達から借りていました。それまで遊んでいたゲームボーイのキャラクターは、基本的に表情が固定されていることが多く、クロノ・トリガーやFFシリーズのように、喜怒哀楽がしっかりと表現されているキャラクターたちには大きな衝撃を受けました。 |
この体験は、今も自分の映像作品の中で、キャラクターのアニメーションを描く時、大切にしている部分に繋がっています。 | |
坂本 | 捨てられていたスーファミに、そんな素敵なストーリーがあったんですね。 |
m7kenji | 涙ぐましい兄弟の物語ともいえますが(笑) |
頭の中に浮かぶ言葉から生まれたゲーム作品
坂本 | これまで『Ringo』や『BUGTRONICA』など、数々のインディーゲームを開発されてきたm7kenjiさんですが、ゲーム作品を制作する時はまずどこから手をつけるんですか? |
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m7kenji | ゲームの“状況”から考えることが多いです。誰がどんな場所にいて、なにが起こるのかなど、ゲームの世界観をまず頭の中で組み立てていく。そこから、キャラクターやストーリーの設定を加えていきます。 |
例えば、アクションゲーム『BUGTRONICA』という作品では、まず主人公の身体がバグっている状況を想像してから、人々と会話をすることで物語が進んでいくストーリーにしようと決めました。 |
坂本 | そもそもの状況からすでに独創的ですね(笑) |
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m7kenji | 当時は、ぼくの頭も少しバグっていました(笑)でも、『BUGTRONICA』はあまりキャラクターの設定や、冒険を楽しむのが重要ではなく、人々が会話しているシーンを使いたいという気持ちが大きくて。 |
坂本 | 人々の会話になにか意味があるんですか? |
m7kenji | 会話を通してなにかメッセージを伝えたいというよりは、純粋に会話自体を要素として組み込みたかった。自分の頭の中に浮かんでくる言葉を、ゲーム作品のなかで使いたかったんです。 |
『BUGTRONICA』を制作していた頃は、よく仕事中に思い浮かんだフレーズなどをブログに書き留めていて。まだm7kenjiとしての知名度もなかった時代、好き勝手に書いた文章を読んでくれる人たちがいたんです。 | |
坂本 | それは詩や散文に近い文章だったんですか? |
m7kenji | かなり“ポエミー”ではありました。でも、なにか伝えたいことがあったわけではなく、自然と出てくる言葉をそこで発散させていた感じです。 |
坂本 | では、言葉からゲーム作品が生まれてきたんですね。 |
m7kenji | 他にも、閉鎖された空間でリンゴを拾うゲーム『Ringo』にも、途中からいろいろな言葉が表示されるんですが、ストーリーとはまったく関係がなくて。ぼくの頭に浮かんだ言葉をただランダムに出しているだけなんです。 |
坂本 | 普段からよく頭の中で言葉が浮かんでくるんですか? |
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m7kenji | 人って仕事などで疲れていると、独り言が増えたりするじゃないですか。あれに近い状態ですね。いつもなら文法的に文章を構成できるのに、急に言葉がぐちゃぐちゃになって出てきてしまう。 |
ぼくの場合は、さらに関係のない言葉が磁石のようにくっ付きだして、意味のない文章を頭の中で作りはじめるんです。 | |
坂本 | つまり、m7kenjiさんの頭の中にあるものが、ゲーム作品の中でも広がっている。まさにm7kenjiさんにしか作れないゲームということですね。 |
東京での生活から生まれた『ロクジョーヒトマ』
坂本 | ゲーム作品を制作する時は“状況”から考えるとのことですが、それは初期の頃からやられていることなんですか? |
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m7kenji | そんなことはありません。携帯電話向けゲームとしてリリースした『ロクジョーヒトマ』というシリーズは、自分が実際に経験したことなどをもとにストーリーを作りました。 |
坂本 | 自分の経験からゲーム作品を制作されたんですか? |
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m7kenji | アクションゲーム『ロクジョーヒトマ』は、人里離れた山から“ネオトーキョー”に上京してきた主人公が、都会の空気におかされ引きこもりになってしまうところから物語が始まるんです。 |
狭い六畳一間の部屋を探索したり、さまざまな敵を倒したりしながら、地下の部屋に降りていくことで、主人公がなぜ引きこもりになったのかがわかってくる。謎解きのような要素を取り入れたゲームでした。 | |
坂本 | アクションゲームなのに奥が深い、、、。 |
m7kenji | ぼくも東京で一人暮らしを始めた時は、狭い1Kの部屋とコンビニを行き来するだけの毎日を送っていて。学生時代に好きだったギターも、仕事が忙しくてあまり弾かなくなっていたんです。 |
そんな東京での経験をもとに制作したのが『ロクジョーヒトマ』。自分の中でも最も深い内容のゲームになりましたね。 | |
坂本 | シンプルな映像だからこそ、内容の深さが際立っています。 |
m7kenji | 『ロクジョーヒトマ』は、ナンバリングが4つあるシリーズで。当時は、まだゲームを制作するための知識がほとんどなく、最初の1作目ではキャラクターを上下左右に動かすだけでも必死だったんです。でも、2作目で玉を撃てるようになり、3作目では敵キャラも登場して、少しずつゲームらしさが出てきました。 |
そして、4作目ではようやく広いダンジョンのようなマップや謎解き、ボスキャラを作ることができるようになって。そういった、自らの技術的な成長も含めて、ゲーム作品としては自分の集大成になりますね。 | |
坂本 | 今ではスマートフォンだけでなく、ゲームボーイでプレイできるソフトも開発されていますよね? |
m7kenji | 当時は、「AdobeAIR」という開発環境で、プレイヤーの移動やテキストウインドウなど、ゲームの基礎的な部分をすべて1から作っていたのです。でも、仕事でブランクがあると、ソースコードを読み直すのが難しくて、開発を断念した作品が3本くらいありました。 |
でも、最近は「GBStudio」や「itch.io」のおかげで、自作のゲームソフトを開発することや、他のプレイヤーに遊んでもらうハードルが低くなり、整った環境でゲーム作品を制作をできるようになったんです。 | |
坂本 | ゲーム開発のやり方も進化しているんですね。 |
m7kenji | そうですね。さらに、ゲームを遊ぶ方法も進化しています。ゲームボーイは古いゲーム機なので、遊びづらいところがあるかもしれませんが、「AnaloguePocket」 などの高品質な互換機を使えば、ゲームボーイに慣れていない世代でも簡単に遊ぶことができます。 |
他にも、海外から取り寄せたパーツに液晶画面を交換すれば、”滲み”が出ないクリアな表示でゲームをプレイすることができます。また、フラッシュカートリッジを使えば、世界中のゲームクリエイターが作ったオリジナルGB作品を遊ぶこともできますよ。 | |
坂本 | そういう情報はどこから手に入れているんですか? |
m7kenji | YouTubeにガジェット系の動画が多く投稿されているので、海外のゲームクリエイターの技術などのも、今では簡単に知ることができます。 |
坂本 | ゲーム開発もグローバル化の時代なんですね。 |
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