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#m7kenji
2024.11.29
m7kenji 特別インタビュー Part4 ピクセルアートとともに進化し続けるクリエイター
Interviewer: 坂本遼󠄁佑
イラストレーター、映像作家、ゲームクリエイター、VJなど、さまざまな“顔”を持つピクセルアーティストのm7kenji氏に特別インタビュー! 今年、2人展「雲を掴むピクセル」や7人展「ピクセルパッチパンチ」だけでなく、7年ぶりとなる2度目の個展「Pulse into Flow」の開催したことでも話題となった、m7kenji氏の創作活動の裏側とはーー。(文=坂本遼󠄁佑|Ryosuke Sakamoto)
謎のデザイン集団「HANDSUM」とは
坂本 | ピクセルアーティストのなかには、個人で活動されている方が多い印象がありますが、m7kenjiさんは「HANDSUM」の所属アーティストとして活動されていますよね。HANDSUMとは、どのような団体なんですか? |
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m7kenji | HANDSUMは、2013年に設立された“デザイン集団”です。デザインやクリエイティブを手がけるモノづくりの会社で、さまざまな領域で仕事をしています。 |
会社というよりフリーランスのクリエイターを集めた感じですね。それぞれ自分で取ってきた仕事を進めていることが多くて、みんな平飼いされたニワトリのように好き勝手しています(笑) | |
坂本 | HANDSUMに所属したきっかけはなんだったんですか? |
m7kenji | ぼくが、高校時代に携帯電話の待ち受けサイト「M7」を運営していたように、代表のTakuro Okuyamaも待ち受けサイトをやっていたんです。その繋がりからmixiで連絡を取り合うようになりました。 |
坂本 | いつ頃からHADNSUMに加入されたんですか? |
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m7kenji | フリーランスとして関わっていた会社が大手に買収され、ベンチャー企業らしい気質を失いつつあった頃、これからどうしようかと考えていたタイミングで、ちょうどOkuyamaから声を掛けてもらったんです。 |
坂本 | HANDSUMとして手がけたプロジェクトなどはあるんですか? |
m7kenji | 個人で活動していることが多いですが、所属アーティストのShomaくんと一緒にインディーゲームの制作などもしています。また、HANDSUMのマスコット的な存在である「アゲアゲくん」(※1)は、実はぼくが裏で飼い慣らしているんです(笑) |
※1)SNSで連載されている4コマ漫画。及び、その主人公であるニワトリのキャラクター。単行本『がんばれアゲ2くん』は第三版まで刊行されている。 | |
坂本 | アゲアゲくんには飼い主がいたんですね…(笑) |
m7kenji | もともと撮った写真に“唐揚げ”を合成するアプリを制作していて、そのPRとして誕生したキャラクターだったんです。今はもうアプリ自体はなくなってしまったんですが、4コマ漫画の連載だけがまだSNSで続いていて。 |
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ぼくが仕事をしたくない時に、アゲアゲくんを無理やり働かせると、いい気分転換になるんです(笑)最近は、アゲアゲくんにもファンができはじめていて。先日、サイン会をやった時には、ファンの方が2人も駆けつけてくれました! | |
坂本 | 少しずつ勢力を拡大しているんですね。 |
m7kenji | 4歳くらいの男の子もサイン会に参加してくれて。SHIBUYA PIXEL ART 2024の「オモろいカドには福来る!」の展示にもブースを出しました。飼い主としては本当に嬉しい限りです。 |
坂本 | 実は、自分もアゲアゲくんの大ファンです(笑) |
渋谷の街を表現したSPA2020メインビジュアル
坂本 | SHIBUYA PIXEL ARTといえば、2020年のメインビジュアル『TRY! PIXEL ART CONTEST』は、m7kenjiさんに制作していただきましたよね。 |
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m7kenji | 代表の坂口さんから連絡をいただいて、コロナ禍で開催された初のコンテストで使っていただきました。 |
『TRY! PIXEL ART CONTEST』(2020)
坂本 | メインビジュアルのデザインでこだわった点などはあるんですか? |
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m7kenji | 華やかな見た目のなかに、どこか“バスの座席シート”のような公共感のある作品にしたくて。夜のネオン街のギラギラした感じを出しつつ、落ち着きのある印象になるように意識しました。 |
坂本 | 女の子をモチーフにしたのには、なにか理由があったんですか? |
m7kenji | SHIBUYA PIXEL ART 2019で、最優秀賞を獲得した『生まれ変わる町』という作品があって、その“B面”のようなイメージで全体のデザインを考えたんです。 |
『生まれ変わる町』(2019)
坂本 | メインビジュアル『TRY! PIXEL ART CONTEST』は、水に反射した街並みのようなデザインが印象的でした。 |
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m7kenji | 実は、メインビジュアルの上半分が、渋谷駅から見た西側を表していて、下半分は渋谷ヒカリエなどがある東側を表しているんです。なので、東側である下半分には、再開発のクレーンなども描かれていて。 |
坂本 | 確かに、上半分には西側にある109や巨大パネルなどが描かれています。 |
m7kenji | 渋谷の街をぶらぶらと歩きながら、街の景観をじっくり観察して描きました。 |
進化していくピクセルアート
坂本 | 今年は、7名のピクセルアーティストによるグループ展「ピクセルパッチパンチ」にも参加されていましたが、他のアーティストの作品はよくチェックされているんですか? |
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m7kenji | SNSなどで見るようにしています。 |
坂本 | 他のアーティストの作品を見ていて感じたことなどはありますか? |
m7kenji | 今のピクセルアートは、数年前に比べてジャンルが細かく“分化”してきている気がします。 |
以前は、ただ風景やキャラクターを描くものが多かったんですが、最近だと解像度のこだわる人やリアルな立体感を出す人など、ロックミュージックから“パンク”や“プログレ”が生まれたように、新しい流れができてきていますよね。 |
坂本 | それはゲームの世界でも同じことですか? |
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m7kenji | ゲームの世界に関しても、ドット絵は“昔懐かしいもの”だったのが、現代的な表現として生まれ変わっている。ゲームソフト『UNDERTALE』などのドット絵にはなかった、さまざまな表現や技法が生み出されてきていて。 |
例えば、スクウェア・エニックスの“HD−2D”(※2)といった、新しい表現技法もドット絵により奥行きを加えましたよね。 | |
※2)スクウェア・エニックスが開発したドット絵と3DCGを組み合わせるグラフィック表現。ゲームソフト『オクトパストラベラー』などで使用されている。 | |
坂本 | では、ドット絵はもう懐かしいものではないんですね。 |
m7kenji | 懐かしさのなかに新しさがあるというか。かつてはゲーム機の技術的な制限のせいで、仕方なくドット絵にしていたものが、今では進化した描画技術やエフェクトのおかげで、リアルさと懐かしさを両立できる時代になっています。 |
坂本 | そんな新しい時代に生きる若手アーティストたちに期待することはありますか? |
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m7kenji | 期待することはないですね。ぼくがピクセルアートの頂点にいるわけではないので、むしろ他のアーティストの方々から、学ばせていただくことが多いです。 |
みなさんこれからも頑張っていただいて、いつか一緒に仕事ができればなと思います。その時は、お手柔らかにお願いしますね(笑) |
m7kenjiがこれからやりたいこと
坂本 | m7kenjiさんが、これからやりたいことってあるんですか? |
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m7kenji | ゲーム作品を制作していきたいです。 |
坂本 | すでに完成しているゲームもありますよね? |
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m7kenji | でも、自分のなかではまだ“チャプターⅠ”なんです。その続きを作っていかなきゃと思っていて。 |
坂本 | まだストーリーの続きがあるんですか? |
m7kenji | それをこれから考えていきたいです。 |
『m7kenji meets adidas Originals Flagship Store Tokyo』EXHIBITION MOVIE
坂本 | 展示会なども開催するんですか? |
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m7kenji | 今年は、2回目の個展を開催することができましたし、多くの展示会にも呼んでいただきました。でも、もっと自分らしい表現を追求できると思うんです。 |
坂本 | 難しい挑戦ですね。 |
m7kenji | 絵が上手いだけだと、他の人でも代わりがきいてしまう。この人だからと期待してもらえるようにならないと、ちゃんと評価してもらえたことにはならないんです。 |
また、自分に対する期待に応えることも大切。自分が満足できる作品を生み出すことができれば、他の人たちも引っ張っていける存在になれるのではないでしょうか。 | |
坂本 | いつまでも自分を高めていく姿勢、本当にカッコいいです。 |
m7kenjiにとってピクセルとは
坂本 | 最後に、m7kenjiさんにとって“ピクセル”とはなんですか? |
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m7kenji | ぼくにとってピクセルとは“記号”です。例えば、「火」という漢字(文字)は、実際の火の形をしていなくても、“火”のことを指しているとわかりますよね。それと同じように、低い解像度のドット絵で情報を伝えていく。 |
火のマークがたくさんあったら、“火事”を連想させることもできる。そういった想像の余地があるところが、ピクセルアートの魅力なのだと思います。なので、ぼくは“情報を伝えるための器”としてピクセルを使っています。 |
- m7kenji
- Interviewer: 坂本遼󠄁佑 the PIXEL magazine 編集長。東京都練馬区出身。大学ではアメリカの宗教哲学を専攻。卒業後は、出版社・幻冬舎に入社し、男性向け雑誌『GOETHE』の編集や、書籍の編集やプロモーションに携わる。2023年にフリーランスとして独立し、現在はエディター兼ライターとして活動している。