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#Pixel Jeff
2024.11.08
Pixel Jeff 特別インタビュー SPA2024最優秀賞を受賞した台湾出身アーティストの実像
Interviewer: 坂本遼󠄁佑
SHIBUYA PIXEL ART 2024のコンテストで、最優秀賞に選ばれたピクセルアーティストのPixel Jeff氏に特別インタビュー! 台湾を拠点に活動する若手アーティストが、受賞作『Bloom』に込めた想いとは−−。(文=坂本遼󠄁佑|Ryosuke Sakamoto)
コロナ禍という壁を乗り越えSPAに出場
坂本 | 今回は、SHIBUYA PIXEL ART 2024のコンテストで、最優秀賞を受賞したPixel Jeffさんにインタビューを行っています。本日は、よろしくお願いします。 |
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Pixel Jeff | よろしくお願いします。 |
坂本 | この度、Pixel Jeffさんの『Bloom』(2024)という作品が、コンテストの審査員から最多の得票数を獲得し、SHIBUYA PIXEL ART 2024の最優秀賞に選ばれましたが、まずは率直な感想から教えてください。 |
Pixel Jeff | 今、授賞式が終わりましたが、まだ緊張でお腹が痛いです。受賞ノミネートの連絡をもらった時は、まさか自分が最優秀賞を獲得するとは思っていませんでした。 |
でも、コンテストの授賞式に参加するために、日本に来られたことが嬉しかったですし、多くの日本のピクセルアーティストや、有名な審査員の方々に会えて本当に感動しました。 | |
坂本 | 今まで日本に来たことはあったんですか? |
Pixel Jeff | これまで4回ほど訪れています。最後に日本に来た時は、去年のSHIBUYA PIXEL ARTを見に来た時です。 |
坂本 | 以前からSHIBUYA PIXEL ARTを知っていたんですか? |
Pixel Jeff | 数年前にInstagramで見つけて、ずっと興味を持っていたんです。でも、コロナ禍で日本に行くことができず、2023年になってやっと会場に来ることができました。 |
遠く台湾で思い描いた“シブヤ”の景色
坂本 | 最優秀賞作品『Bloom』のアイデアは、どのようにして生まれたんですか? |
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Pixel Jeff | この作品を通して、なにかを伝えようとは考えていなかったのですが、最初から渋谷を舞台に女の子のイラストにしようとは思っていました。 |
坂本 | 作品全体の色使いにもオリジナリティがありますよね。 |
Pixel Jeff | 背景を鮮やかな青空にすることで、ピンク色の髪の女の子を引き立てています。 |
坂本 | 女の子のキャラクターに、誰かモデルなどはいたんですか? |
Pixel Jeff | 自分の頭の中で想像した人物です。 |
坂本 | アジア系の女性にも見えますし、ヨーロッパ系とも取れる顔立ちですよね。 |
Pixel Jeff | ぼく自身がアジア人なので、人物を描く時はどうしてもアジア系の顔になってしまうんです。でも、日本人が見たら日本人の印象を持つのかもしれないし、もしかしたらヨーロッパ系に見えるのかもしれません。また、他の国の人が見たらさらに違う見え方がするのだと思います。 |
坂本 | 背景の渋谷の街並みは、実際に見たものを描いたんですか? |
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Pixel Jeff | 数年前に渋谷に来たことがあったのですが、その時の記憶だけではイラストを書けないので、今の渋谷の様子をインターネットで調べたりもしました。 |
坂本 | 渋谷の街並みを描く時に、なにか意識したことはありますか? |
Pixel Jeff | 渋谷のトレードマークである「109」を要素に入れたのですが、あまり強調しすぎないようにしていて。また、渋谷には“歩道橋”が多い印象があったので、歩道橋が前面に出るように描いています。 |
坂本 | 確かに、渋谷の街中には歩道橋がよくありますよね。 |
Pixel Jeff | でも、日本に訪れた海外の観光客は、ビルの上から歩道橋を見下ろすことが多いと思うんです。なので、あえて横から見た歩道橋を描いてみました。 |
街に咲き誇る花で表現した人の“幸せ”
坂本 | 今回のコンテストのテーマは「花」でしたが、花の表現でこだわった点などはありますか? |
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Pixel Jeff | 作品に描かれている花は、人の“幸せ”を象徴しています。また、花で人の温かさや優しさ、恋愛的な感覚などもイメージして描きました。 |
坂本 | なぜ花を“幸せ”の象徴にしたんですか? |
Pixel Jeff | 花が咲くということは、また新しい生命が芽吹くということ。そんな希望を持たせてくれる花は、まさに“幸せ”の象徴なんだと思います。なので、作品のタイトルも“咲く”という意味の“Bloom”にしています。 |
坂本 | 自分もPixel Jeffさんの作品を見た時、どこか幸せな気持ちになりました。普段から“幸せ”をテーマにした作品を製作されているんですか? |
Pixel Jeff | 普段の作品では、あまり“幸せ”をテーマにすることはありません。でも、今回のコンテストのテーマが「花」だったので、あえて“幸せ”を表現してみようと思いました。 |
高校の授業で出合ったピクセルアート
坂本 | Pixel Jeffさんがアートに興味を持ったのはいつ頃ですか? |
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Pixel Jeff | 子供の頃から絵を描くことが好きだったんです。誰か好きなアーティストがいたわけではないのですが、クリエイティブなことをするのが趣味で。高校もアート系の学校に進学しました。 |
坂本 | なにかピクセルアートを始めたきっかけはあったんですか? |
Pixel Jeff | 高校でデジタルアートを学ぶ授業があったんです。パソコンを使ってPhotoshopなどで実際にイラストを制作する実習があって。そこでピクセルアートに触れたことがきっかけでした。 |
坂本 | 高校の授業がピクセルアートとの出合いだったんですね。 |
Pixel Jeff | そうです。もともと1980年代の任天堂などのゲームに興味があったので、ドット絵には親しみがあったんです。でも、授業では少ししかピクセルアートを扱わなかったので、自分でYouTubeの動画などを見ながら勉強しました。 |
坂本 | 高校では、アート全般を学んでいたんですか? |
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Pixel Jeff | デジタルアートも勉強しましたし、古典的なアート作品などの授業もありました。 |
坂本 | 現在はどのような活動をしているんですか? |
Pixel Jeff | 2013年からピクセルアーティストとして活動を始めて、今はフリーランスのアーティストとして活動しています。 |
坂本 | 個展なども開催されているんですか? |
Pixel Jeff | 昨年、アーティスト活動10周年を記念して、初の個展を台北で開催しました。 |
坂本 | 来場者はどのくらいだったんですか? |
Pixel Jeff | 広い展示スペースだったので、約1000人の方が見にきてくれて。チケット制だったのですが、ファンの方々も多く訪れてくれてくれました。 |
日本とは一味違う台湾のピクセルアート事情
坂本 | 今、台湾ではピクセルアートが盛り上がっているんですか? |
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Pixel Jeff | 日本ほどではないのですが、ぼく以外にもピクセルアーティストがいます。ただ、彼らはアーティストというよりも、ゲームクリエイターに近い人たちが多いです。 |
坂本 | コミュニティ内での交流などはあるんですか? |
Pixel Jeff | ゲーム向けのコミュニティが多いですが、イラストを描く人たちのコミュニティもあって。それなりの人数が集まっていますよ。 |
坂本 | アーティスト同士で作品を見せ合うことも? |
Pixel Jeff | SNSで作品を投稿し合っていますし、毎年、台北でアート系のイベントも開催されているんです。ピクセルアートだけでなく、さまざまなジャンルのアート作品が集まって、グッズの即売会なども行われています。 |
より多くの人に自分の作品を知ってもらい、アーティストとしての知名度を上げるために、たくさんのクリエイターたちが参加しているんです。 | |
坂本 | Pixel Jeffさんがこれからやりたいことなどはあるんですか? |
Pixel Jeff | これからもピクセルアートの作品を制作し続けていきますが、今までみたいな平面のイラストだけでなく、立体作品や3Dの作品にも挑戦していきたいです。 |
Pixel Jeffにとってピクセルとは
坂本 | 最後に、Pixel Jeffさんにとって“ピクセル”とはなんですか? |
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Pixel Jeff | ぼくにとってピクセルとは“楽しみ”です。ドット絵を描いている時が一番楽しい時間ですし、今、自分が最もやりたいことでもあります。純粋な趣味に近い存在ですね。 |
クライアントワークとしてドット絵を描く時は、少しストレスに感じることもありますが、自分の好きに描けるのであれば本当に楽しいです。最近読んだ小説や、感銘を受けた映画、印象に残った風景をアート作品として表現できるので。 |
- Pixel Jeff
- Interviewer: 坂本遼󠄁佑 the PIXEL magazine 編集長。東京都練馬区出身。大学ではアメリカの宗教哲学を専攻。卒業後は、出版社・幻冬舎に入社し、男性向け雑誌『GOETHE』の編集や、書籍の編集やプロモーションに携わる。2023年にフリーランスとして独立し、現在はエディター兼ライターとして活動している。