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#ジゼル愛華
2025.11.14
ジゼル愛華 特別インタビュー Part2 ファミコンとの出合いからピクセルアートの世界へ
Interviewer: 坂本遼佑
カラフルな色使いで街や少女のイラストを描くピクセルアーティストのジゼル愛華さん。日本のカワイイ文化や現代アートに強い影響を受け、19歳にして銀座の蔦屋書店で個展を開催するなど、その才能はアートジャンルの垣根を超えて注目されている。そんな今話題の若手作家であるジゼル愛華さんに特別インタビュー! モデルやタレントとしても活動している、現役大学生クリエイターの素顔に迫る。(文=坂本遼佑|Ryosuke Sakamoto)
ブラジルで出合ったファミコンのドット絵
| 坂本 | 今では、ピクセルアーティストとして知られるジゼル愛華さんですが、ドット絵を知ったのはいつ頃だったんですか? |
|---|---|
| ジゼル愛華 | 特にいつ頃ということはないのですが、幼少期からファミコンのゲームで遊んでいました。 |
| 坂本 | それはブラジルに住んでいた時の話ですか? |
| ジゼル愛華 | はい。ブラジル人の父親が日本のカルチャー好きで、特に日本のゲームカルチャーが好きだったんです。それで、父親が買ったファミコンのゲームをよく横で見ていました。 |
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| 坂本 | ブラジルでもファミコンが売られていたんですね。 |
|---|---|
| ジゼル愛華 | なので、家には『ゼルダの冒険』や『スーパーマリオブラザーズ』などのカセットがあって、よくひとりで『ゼルダの冒険』で遊んでいました。 |
| 坂本 | ブラジルにいたからこそ、日本のゲームのトレンドにとらわれず、好きなゲームソフトで遊べたのかも。 |
| ジゼル愛華 | それはあると思います。当時は、ゲームソフト『マインクラフト』でもよく遊んでいて、友達とはみんなで盛り上がれるゲームを楽しんでいたのですが、ひとりで遊ぶ時はだいたいファミコンでしたね。 |
| 坂本 | 今では“レトロゲーム”と呼ばれるファミコンですが、ジゼル愛華さんにとっては現役のゲーム機だったんですね。 |
| ジゼル愛華 | あまり意識したことはありませんが、当時のゲーム体験が今のドット絵に繋がっているのかもしれません。 |
YouTubeの企画で感じたドット絵の魅力
| 坂本 | そこから本格的にピクセルアートを描き始めたのはいつ頃だったんですか? |
|---|---|
| ジゼル愛華 | 10歳の時に原宿で芸能事務所のスカウトを受けて、モデルやタレントとして活動をし始めてから、中学2年生の時にYouTubeの『プログラミング少女』というチャンネルに出演することになったんです。 |
| そのひとつの企画として、ドット絵で描いたキャラクターを3Dで動かすというものがあって、中学生の女の子たち4人でドット絵を描いたのがはじまりでした。 |
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| 坂本 | 『プログラミング少女』という企画に呼ばれたきっかけはなんだったんですか? |
|---|---|
| ジゼル愛華 | もともと子どもの頃からゲームに興味があったので、プログラミングなどにも挑戦してみたかったんです。そしたらYouTubeチャンネルを企画している方から声をかけていただいて。 |
| 34×34のキャンパスにキャラクターを描いて、プログラミングで動かすという企画だったのですが、思った以上に自分がのめり込んでしまったんです。限られたマス目の中でなにかを表現することの楽しさに目覚めてしまって。 | |
| 坂本 | そこからピクセルアートへの情熱が芽生えたんですね。 |
| ジゼル愛華 | 以来、ピクセルアートのイベントにも積極的に足を運ぶようになって、自分でもドット絵のイラストを描くようになっていました。 |
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| 坂本 | ピクセルアーティストとしての原点ですね。 |
|---|---|
| ジゼル愛華 | 当時は、落書き感覚でドット絵を描いていたのですが、いつしかツールがスマホからタブレッドに移り変わって、今では移動時間などにペンタブでドットを打つようになりました。 |
SHIBUYA PIXEL ARTで初のダブル受賞
| 坂本 | 2021年のSHIBUYA PIXEL ARTのコンテストでは、『4B8 beat』(2021)という作品で、優秀賞と杉山央賞のダブル受賞をされていますよね? |
|---|---|
| ジゼル愛華 | ピクセルアートに出会ってから、初めてコンテストで賞を獲得した作品でした。 |
『4B8 beat』(2021)
| 坂本 | まだピクセルアートを描きはじめたばかりの作品だったのですか? |
|---|---|
| ジゼル愛華 | ドット絵を描きはじめて2〜3年目の作品だったのですが、コンテストに出品したのは初めてのことでしたね。 |
| 坂本 | それにしては、細かいところまで上手く描き込めている作品だと思います。 |
| ジゼル愛華 | 何度か落書きのようなドット絵のイラストを描いて、自分のなかで納得のできる作品ができたところで、そのなかのひとつの作品をSNSに投稿したんです。 |
この日は、SHIBUYA PIXEL ART 2021の授賞式が行われたSHIBUYA CAST. OFFICEで取材を行った。
| 坂本 | まさかひとつの作品でダブル受賞していたとは。 |
|---|---|
| ジゼル愛華 | SHIBUYA PIXEL ART 2021に出品した作品は、初めてのGIFアニメーションの作品でもあったんです。なので、細かい色使いや動きのもこだわって制作しました。 |
| 坂本 | コロナ禍で開催されたSHIBUYA PIXEL ART 2021の「Reboot〜渋谷から勇気を届ける〜」というテーマにぴったりな、カラフルでポップな作品だったと思います。 |
| ジゼル愛華 | まさか自分の作品が受賞するとは思っていなかったので、コンテストの結果を見た時は自分のなかでも驚きでいっぱいでした。 |
| 坂本 | たくさんの色を使うとごちゃごちゃとした印象になるところを、見事にひとつの作品にまとめあげた技術と色彩感覚が評価されたのかと。 |
| ジゼル愛華 | その作品がきっかけとなり、ピクセルアーティストとして認知してもらえるようになって、さまざまな企画やグループ展などにも呼んでいただけるようになりました。 |
- ジゼル愛華

- Interviewer: 坂本遼佑 the PIXEL magazine 編集長。東京都練馬区出身。大学ではアメリカの宗教哲学を専攻。卒業後は、出版社・幻冬舎に入社し、男性向け雑誌『GOETHE』の編集や、書籍の編集やプロモーションに携わる。2023年にフリーランスとして独立し、現在はエディター兼ライターとして活動している。