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ARTICLES ARTIST #ジゼル愛華 2025.11.14

ジゼル愛華 特別インタビュー Part3 少女の大きな瞳に込められたアートへの想い

Interviewer: 坂本遼佑 

カラフルな色使いで街や少女のイラストを描くピクセルアーティストのジゼル愛華さん。日本のカワイイ文化や現代アートに強い影響を受け、19歳にして銀座の蔦屋書店で個展を開催するなど、その才能はアートジャンルの垣根を超えて注目されている。そんな今話題の若手作家であるジゼル愛華さんに特別インタビュー! モデルやタレントとしても活動している、現役大学生クリエイターの素顔に迫る。(文=坂本遼佑|Ryosuke Sakamoto)

渋谷や原宿の街に溢れる日本カルチャー

坂本 ジゼル愛華さんの作品には、しばし渋谷や原宿の街並みが描かれていますが、よく渋谷や原宿で遊んでいたんですか?
ジゼル愛華 高校生時代に通っていたダンススクールが、今の渋谷ストリームがある場所にあったので、よく千葉県の実家から渋谷に通っていました。
坂本 原宿には遊びに行っていたんですか?
ジゼル愛華 原宿は、街全体のカルチャーやファッションが好きで、よく友達とプリクラを撮りに行ったり、クレープを食べたりして遊んでいました。
坂本 原宿といえば日本のポップカルチャーの発信地ですもんね。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part3 少女の大きな瞳に込められたアートへの想い普段からタブレットを持ち歩いてアイデアが思い浮かぶとドットを打っているのだとか。

ジゼル愛華 高校生の頃は、アーティストのきゃりーぱみゅぱみゅさんや、女性アイドルグループのCY8ER(サイバー)さんが好きで。
きゃりーぱみゅぱみゅさんは、ライブのコンサートに訪れたこともあります。きゃりーぱみゅぱみゅさんの独特な色使いが好きで、今でも大きな影響を受けています。
坂本 当時は、KAWAII MONSTER CAFEなども人気でしたもんね。
ジゼル愛華 KAWAII MONSTER CAFEにも訪れたことがあって、蛍光色の内装やオリジナルのフードを楽しんでいました。
坂本 まさに“原宿カルチャー”ですね。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part3 少女の大きな瞳に込められたアートへの想い

ジゼル愛華 原宿の街並みは、歩いているだけできゃりーぱみゅぱみゅさんの楽曲が流れてくるような、カラフルでポップなカルチャーに溢れていました。
坂本 その真横にある渋谷の街並みとは違う趣があります。
ジゼル愛華 渋谷の街中には、大画面のサイネージ看板があったり、夜のネオン街の独特の雰囲気があったりと、“デジタル化”した街並みの印象がありました。
坂本 幼少期に過ごしたブラジルの街並みとは違う、東京ならではのムードが流れていますよね。
ジゼル愛華 どちらにもそれぞれ良さがあるのですが、慣れてくると東京にも住み心地の良さを感じるようになりました。

あの“大きな瞳の少女”ができるまで

坂本 ジゼル愛華さんの作品の特徴として、大きな瞳の少女が描かれている点があると思うのですが、これは日本のアニメや少女漫画が影響しているのでしょうか?
ジゼル愛華 日本に移住してから『らんま1/2』や『犬夜叉』など、高橋留美子先生のアニメをよく見るようになったので、日本のアニメカルチャーの影響は少なからず受けていると思います。
でも、それよりもタカノ綾さんや奈良美智さんの作品に強く影響を受けている気がします。特にタカノ綾さんは。かつて個展に行かせていただいたことがあって、彼女の独特の世界観に感動したのを覚えています。
坂本 アニメだけでなく現代アートにも影響を受けていたんですね。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part3 少女の大きな瞳に込められたアートへの想い

ジゼル愛華 タカノ綾さんの作品は、目のキラキラ感に強い感銘を受けて、自分も同じように素敵な作品を描けたらと思うようになりました。
坂本 自分はジゼル愛華さんの作品を見た時、勝手に少女漫画や平成のアニメカルチャーに影響を受けたのかなと思ったのですが、まさかタカノ綾さんや奈良美智さんに感銘を受けていたとは。
ジゼル愛華 他にも、ドット絵の作品を制作している時は、音楽にも大きな影響を受けていて、きゃりーぱみゅぱみゅさんなどの楽曲を聴きながら、その世界観やムードを作品の中に落とし込んでいます。
坂本 いろんなカルチャーからインスピレーションを受けているんですね。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part3 少女の大きな瞳に込められたアートへの想い『沼ハマ みちづれ』(2024)

ジゼル愛華 かつて「ニコニコ超会議」のイベントに参加したことがあって、初音ミクさんなどのライブにも感動したのを覚えています。なので、私にとって音楽やポップカルチャーは、作品制作に切っても切れない存在なんです。
坂本 ブラジルで生まれ育ち、10代で初めて日本のカルチャーに接した、ジゼル愛華さんならではの感覚ですね。

自らが訪れた場所の空気感を描きたい

坂本 ひとつの作品を制作する時、コンセプトから作品を制作する人もいれば、描きたいものをもとに描く人もいますが、ジゼル愛華さんはどのように作品を描きはじめますか?
ジゼル愛華 私の場合は、コンセプトと描きたいものが同時に頭に浮かんでくることが多いです。例えば、描きたいものが先にある場合でも、そこからすぐにコンセプトが思い浮かんできて、さらに細かいディテールが決まっていく。
常に、描きたいものとコンセプトが同時に浮かんでくるんです。なので、その相互作用として作品が出来上がってくるイメージです。
坂本 では、なにか作品を描こうとする動機には、どんなものが根底にあるのでしょうか?
ジゼル愛華 自分が訪れた場所のイメージを描きたいという衝動が大きいですね。自分の心が動いた場所の情景を作品に落とし込みたいというか。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part3 少女の大きな瞳に込められたアートへの想い

坂本 どこか描きたい場所があって、そこから作品が思い浮かぶんですね。
ジゼル愛華 なので、私が描く少女たちの表情も、その場所を訪れた自分の感覚であったり、幼い頃に感じた心情だったりを描いていることが多いです。
坂本 場所をもとに描いているんですね。
ジゼル愛華 その場所の空気感であったり、印象だったりを作品にしたいので、自分の感覚を大事にしながらイラストで表現しています。

ジゼル愛華 特別インタビュー Part3 少女の大きな瞳に込められたアートへの想い『Untitled』(2023)

坂本 だから、ジゼル愛華さんの作品を見ていると、どこか没入感を覚えることがあるんですね。確かに、よく知っている渋谷や原宿の街並みも、初めて訪れた場所のような感覚におちいります。
ジゼル愛華 それは、私にとって“新しい地”だからです。

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  • 坂本遼佑
  • Interviewer: 坂本遼佑 the PIXEL magazine 編集長。東京都練馬区出身。大学ではアメリカの宗教哲学を専攻。卒業後は、出版社・幻冬舎に入社し、男性向け雑誌『GOETHE』の編集や、書籍の編集やプロモーションに携わる。2023年にフリーランスとして独立し、現在はエディター兼ライターとして活動している。