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#モトクロス斉藤
2024.11.15
モトクロス斉藤 特別インタビュー Part3 UPCや水曜ドット打つデイはなぜ誕生したのか
Interviewer: 坂口元邦
秀学社の資料集『美術資料』に作品が掲載されたことや、大塚製薬の「ポカリスエット」の広告を制作したことで、ピクセルアート界隈に新たな息吹をもたらしているモトクロス斉藤氏に特別インタビュー! 全4回に分けて、「Ultimate Pixel Crew(通称:UPC)」や「水曜ドット打つデイ」の誕生秘話、代表的な作品に込められた想いなどを紹介する。
第3回では、2018年にピクセルアーティストのAPO+氏とせたも氏とともに、ピクセルアーティスト集団「UPC」を結成した経緯や、ライブ配信「水曜ドット打つデイ」でのエピソード、そして若手ピクセルアーティストに対して想うことを深掘りした。(文=坂本遼󠄁佑|Ryosuke Sakamoto)※この記事は2024年5月に取材したものです。
今明かされる「UPC」の誕生秘話
坂口 | 現在は、ピクセルアーティスト集団「UPC」(※1)としても活動されていますが、グループを結成することになったきっかけはなんだったんですか? |
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※1)ピクセルアーティスト集団「Ultimate Pixel Crew」の略称。APO+氏、モトクロス斉藤氏、せたも氏の3名から構成されるピクセルアート制作チーム。 | |
モトクロス斉藤 | 大学で知り合った友人のAPO+くんに誘われたことが、UPCを結成したそもそものきっかけでした。 |
人を集めてお祭りみたいなことをするのが好きなAPO+くんは、大学時代も学園祭の実行委員会に所属していたんです。でも、俺はDJサークルの部室に引きこもって音楽活動ばかりしていて。学園祭の実行委員会に誘われたこともあったんですが、ずっと「勝手にやってくれ」って断っていたんです。 |
坂口 | そこからなぜUPCを結成することになったんですか? |
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モトクロス斉藤 | 大学卒業後に交通事故にあったことで、ピクセルアートの作品を自分なりに描くようになって。それを見たAPO+くんもピクセルアートを始めたんです。 |
そんな時に、APO+くんから「せたもくんってヤベーやつを見つけたから、チームを作って負けないようにしようぜ!」って言われたんです。まだなにをするかも決まってないのに、負けないようにってなんだよって感じですよね(笑) | |
坂口 | せたもさんとの出会いは、どこだったんですか? |
モトクロス斉藤 | APO+くんがインターネットで見つけて。カッコいい作品を多く制作していたので、そのうち一緒に活動してみたくなったんです。 |
坂口 | それでUPCを結成することになったんですね。 |
モトクロス斉藤 | 「何者になるつもりかはわかんないけど全員で本気でやろう」と、チームとして行動するようになりました。 |
坂口 | APO+さんがUPCの発起人だったことを初めて知りました。 |
モトクロス斉藤 | なので、初めから自分の頭の中では、UPCの結成なんて微塵も考えてなかった。なんなら、これまで生きてきて、自分からチームを作ろうとしたことはほぼない。いつも誰かがチームを作ろうとしている時に、たまたま俺がそこにいるんです。 |
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俺は、基本的に天邪鬼な性格なので、いつも人と違うものをやりたくなる。音楽にしたって、一時期は人気がなかった90年代のヒップホップにハマっていたら、数年後にまたヒップホップの流行りがきて。友達から「お前、自分でトラックを作れるんだから、それをリミックスして、ラップを付けてくれれば曲ができるじゃん」って。 | |
坂口 | 自分が面白いと思うものを追いかけていたら、そのブームの波が再び訪れた時に、みんなより先回りしているのに自慢げにしていないと、リスペクトされる存在になっている感じですね。 |
モトクロス斉藤 | カッコよく言えばそうですが、実際は「こいつ、ちょろいじゃん!」って、いいように使われているだけですよ(笑) |
坂口 | でも、センスがあるから多くの人が興味を持ち、声をかけてみようと思う。それは、モトクロス斉藤さんの“人間力”があってこそのことではないでしょうか。 |
「水曜ドット打つデイ」の中の自由人
坂口 | モトクロス斉藤さんとAPO+さんは、これまで「水曜ドット打つデイ」のライブ配信もされてきましたが、「水曜ドット打つデイ」はどのような経緯で始めたんですか? |
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モトクロス斉藤 | 「水曜ドット打つデイ」も、APO+くんに誘われたのがきっかけでした。俺はひとりで勝手にやっているタイプの人間なので、ライブ配信とかには特に興味がなくて。でも、ピクセルアートを描きだして1年くらいたった時に、APO+くんから「一緒にやらない?」って言われて、「いいよ!」とすんなり話が決まりました。 |
もともと喋ることが好きなので、なにか単純な作業をする時は、いつも友達と通話をしながら手を動かしているんです。なので、自分たちがドット絵を描きながら会話をしているのを聞いて、リスナーのみんなもドット絵を描いてくれたら嬉しいよねって。なんとなくスタートしました。 |
坂口 | ライブ配信をしていて印象深かったエピソードなどはありますか? |
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モトクロス斉藤 | 実はライブ配信中のことって、なにも覚えてないんですよ(笑)自分は喋りのプロではないので、配信者という意識があまりなく。「これは言っちゃダメだよね」ということさえ気を付けていれば、あとは好きなことを話しているので日常会話と変わらない。単なる“自由者”なんです。 |
ライブ配信の準備もAPO+くんがやってくれるので、直前に「今日はなにやるんだっけ?」って聞いて、好き勝手にお喋りをしているだけ。だから、ライブ配信が終わると、APO+くんはいろいろなことを考えているのですごく疲れているんですけど、俺はなにも考えていないのでまったく疲れてないんです。 | |
坂口 | でも、そのモトクロス斉藤さんとAPO+さんの関係性が、どこか居心地のいい空間を生み出しているんでしょうね。ぼくが視聴した時は、100人近くのリスナーが同時にドット絵を描いていて、まさに“お祭り”のような盛り上がりでした。きっとそのうちギネスに載るのでは?っと思っています。 |
モトクロス斉藤 | たぶんAPO+くんがやりたいことって、あの“お祭り”みたいな空気感なんですよ。 |
坂口 | 他にはない「水曜ドット打つデイ」の独特の空気感ですよね。 |
モトクロス斉藤 | 毎回、リスナーの作品を見ていると、自分だと考えもしないような技法があって、「そんなことやってくるの!?」という驚きがありました。それに比べて俺のドット絵は超下手で、「なんで、みんなこんな上手いの? 終わった、、、」って思うことも多かったです。 |
坂口 | ライブ配信の回数を重ねていくうちに、ドット絵が上達していくリスナーもいますよね。 |
モトクロス斉藤 | 水曜ドット打つデイの10分ドットをきっかけに、ピクセルアートを始めたというリスナーがいて、最近の作品を見せてもらったら、「なんで自分たちの配信きっかけから、こんなすごい作品ができるようになったの?」ってくらい。マジですげえ上達している人もいました。 |
創作活動が嫌になったらやめればいい
坂口 | ここ数年、ピクセルアートのコミュニティも活性化してきていて、若い世代のアーティストが増えていていますが、若い人たちに期待していることはありますか? |
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モトクロス斉藤 | 期待することはないですね。それぞれのやり方で、好きに楽しめばいいんじゃないですか? 変に気負う必要もないし、嫌になったらやめてもいい。人によっては言い過ぎだと思う人もいるかもしれませんが、苦しんでまでやることではないですよ。 |
でも、創作活動が自分への救いになるというか、最終的に「やっぱりドット絵っていいもんだな」って感じられたら、みんな幸せに物作りができるんじゃないかな。そしたら、コミュニティ全体も居心地のいい雰囲気になるはず。あとは、みんなもっと俺に話しかけてください! 寂しいので(笑) |
坂口 | なにかのインタビュー記事のなかで、APO+さんと出会ってなかったら、アーティスト活動をやめていたかもしれないとありました。創作活動って孤独な部分も多いと思うのですが、一緒に活動できる人がいることは大きな意味を持つのでしょうか? |
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モトクロス斉藤 | 一緒に活動ができる人がいることは大切ですね。俺はカッコつけることが好きなので、「UPC」とかもカッコつけで言ってるだけ、みたいなところがあるんです。それをいいねと思ってくれる人がいるんだったら、ひとりで悩まないで一緒に走って行こうぜと思っています。 |
ドット絵のことを“芸術”だと思っている人もいますが、俺にとってドット絵はただの“遊び”なので。始めた頃の俺とAPO+くんみたいに、「お前、そんなの描いたのかよ! じゃあ俺もこういうの描こう」くらいの感覚で、仲間と作って行ったらいいじゃないでしょうか。 | |
坂口 | 素敵な関係性ですね。 |
モトクロス斉藤 | とにかく気負う必要はないので、嫌になったら一旦やめて旅行でも行けばいい。そこから先になにか作品を制作したくなったら、おおいに作品を生み出してくれ、俺はその作品を見てぇなって思います。 |
ピクセルアートの業界自体も、まだ誰かが背負う段階になっていない気がするし、自分のことを成り立たせられるほど成功している人もほぼいない状態なので、まずは自分のことを成り立たせるために頑張ろうぜってね。 |
- モトクロス斉藤
- Interviewer: 坂口元邦 the PIXEL代表。SHIBUYA PIXEL ART実行委員会発起人。18歳で渡米し、大学では美術・建築を専攻する傍ら、空間アーティストとして活動。帰国後は、広告業界で企業のマーケティングおよびプロモーション活動を支援。ゲーム文化から発展した「ピクセルアート」に魅了され、2017年に「SHIBUYA PIXEL ART」を渋谷で立ち上げた。現在は、ピクセルアーティストの発掘・育成・支援をライフワークにしながら、「現代の浮世絵」としてのピクセルアートの保管や研究を行う「ピクセルアートミュージアム」を渋谷に構想している。