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#ななみ雪
2024.04.20
ななみ雪 特別インタビュー Part1 参加者と一緒に作りあげる体験型展示の意義
Interviewer: 坂口元邦
自身初となるイラスト集の発売や、都内でふたつの個展の同時開催など、今大きな注目を集めているピクセルアーティストのななみ雪氏に独占インタビュー。全3回に分けて、スナップ写真のような女の子のイラストの誕生秘話や、ピクセルアートのコミュニティに対する想いなどを紹介する。
全3回にわたりシブヤピクセルアートの主催である坂口元邦が、ななみ雪氏のアーティストとしての魅力に迫る本連載。第1回では、新宿で開催された個展「Recollections」で、ななみ雪氏が理想とする個展のあり方や、それぞれの企画に込めた想いなどを聞いた。(文=坂本遼󠄁佑|Ryosuke Sakamoto)
個展「Recollections」ができるまで
坂口 | 今回は、ツクル・ワーク新宿センタービル店で開催されている、ピクセルアーティストのななみ雪さんの個展「Recollections」(※1)で、インタビューをさせていただいています。本日は、よろしくお願いいたします。 |
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※1)2024年3月9日から3月31日(日)まで開催された、ツクル・ワーク新宿センタービル店での個展。 | |
ななみ雪 | よろしくお願いいたします。 |
坂口 | この個展はどのような経緯で、開催されることになったんですか? |
ななみ雪 | そもそもは2023年3月に催されたデジタルアート美術展「出現画廊」に出展した作品が、「キンコーズ賞」に選ばれたことがきっかけでした。副賞としてキンコーズさんが運営するツクル・ワークで、私の個展を開催していただけることになったんです。 |
坂口 | 「出現画廊」には、ドット絵以外の作品も展示されていたんですか? |
ななみ雪 | いろんなスタイルの作品が展示されていました。 |
坂口 | ななみ雪さんは、どのような作品を出展されたんですか? |
ななみ雪 | ドット絵のイラストです。でも、ピクセルアートというよりも、バイナリアート(※2)に近い作品でした。当時は、ピクセルアートにも興味はあったけど、普通のイラスト画も好きで、自分なりにふたつの“真ん中”を探っていたんです。 |
※2)ピクセルアートのひとつ。2値ペンで描かれた高解像度のドット絵。 |
坂口 | ちょうど悩んでいる時期でもあったんですね。 |
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ななみ雪 | ピクセルアートとバイナリアート、どちらにもそれぞれの良さがあって。でも、ピクセルアートに本格的に手を出してみたかったのですが、どうやったら上手く描けるのかわからなかったんです。 |
坂口 | ピクセルアートに興味を持った人には、よくある悩みかもしれません。 |
来場者と一緒に作り上げる“参加型の個展”
坂口 | 個展「Recollections」の中で、特にこだわった作品はどれですか? |
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ななみ雪 | やはりメインビジュアルになった作品です。今回の個展のために、書き下ろしで製作したイラストで。壁一面に展示していただけるということで、これまでの作品にはない横長の構図でドットを打ちました。どこか映画のようなドラマチックな演出も加えたくて。 |
坂口 | 構図を変えるだけで、他の作品とは違う印象になりますね。 |
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ななみ雪 | 自分でも描いているなかで、新しい発見がたくさんありました。これまで制作してきた作品のなかでも、特に思い入れが強くて気に入っています。 |
坂口 | 来場者が自ら好きな色のドットを選び、ひとつのピクセルアートを完成させる参加型の展示も出されていますね。 |
ななみ雪 | みなさん、色の選び方やドットの打ち方に個性があり、私自身も「そこに貼るんだ!」と楽しみながら見させていただいています(笑) |
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坂口 | もうひとつの見所が、さまざまなアイテムが販売されているグッズコーナーですが、会場に来たお客さんからの反響はいかがですか? |
ななみ雪 | ポストカードやトートバッグが並ぶグッズコーナーも、来場者の方々から人気が高いです。自分の好みにカスタマイズしたノートを制作できる体験型のブースでは、表紙を選びきれず何冊も作る人や、こだわりの1冊を選び抜いて製本する人など、それぞれのやり方で楽しんでいただいています。 |
坂口 | ただ作品を展示するだけでなく、作家と来場者がお互いに個性を出し合い楽しめる展示の仕方は、ななみ雪さんの個展ならではですね。 |
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ななみ雪 | 来ていただいた方と一緒に個展を作り上げたい。そんな気持ちで会場全体を構成しました。 |
『ドット絵なんでも相談会』に込めた想い
坂口 | 現在、原宿にある国内唯一の富士フイルム直営写真店 「FUJIFILM WONDER PHOTO SHOP」(※3)でも、ななみ雪さんの個展「PIXEL GIRL SNAPS」を開催されていますが、そちらはどのような展示なんですか? |
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※3)2024年3月29日から4月17日まで開催された、イラスト集「PIXEL GIRL SNAPS」の発売を記念して開催された個展。 | |
ななみ雪 | キャンバスプリントの作品を主に、過去のイラストを展示させていただいています。また、複数のモニターでアニメーションの作品も表示していて、一枚絵と動画の両方を鑑賞することができます。 |
坂口 | 3月30日には、個展の開催記念イベント『ドット絵なんでも相談会』を催されていますが、実際に参加者の方の相談を受けていかがでした? |
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ななみ雪 | 私自身、すごく楽しいイベントでした。例えば、イラストレーターとして仕事をされている方で、最近ピクセルアートに興味を持ったという方が参加されていたんです。さまざまなイラストを描いてきたので基礎はわかるけど、ドット絵らしい色の塗り方がわからないとご相談をいただいて。 |
これまでオンラインやイラスト集の中で、ドット絵の解説をしたことはあったのですが、対面形式で描き方を教えるのは初めてのことで。その場で細かいやり方を言語化しながら指導しているうちに、自分でも無意識にこだわっていた点などを再認識することができました。 | |
坂口 | 対面での相談会は、ななみ雪さん自ら企画されたんですか? |
ななみ雪 | そうです。個展が開催されるタイミングだったので、いい機会だし新しいことに挑戦してみようと思ったんです。 |
坂口 | ななみ雪さんは、いつもピクセルアートのコミュニティに、ご自身のノウハウを惜しみなく開示されていますよね。新刊のイラスト集でもドット絵の描き方を紹介されていて。そこには、なにかななみ雪さんの想いがあるんですか? |
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ななみ雪 | 私は独学でピクセルアートを始めたので、初めはなにもわからず右往左往しながら、少しずつドット絵の描き方を身につけてきました。あの頃、もし描き方を教えてくれる人がいたら、もっとすんなりと自分のスタイルにたどり着けていたかもしれない。 |
そんな想いからピクセルアート初心者の方々と、交流できる場を設けられたらと考えたんです。私のように迷いながら描くのではなく、自分に合ったやり方を上手く見つけてほしい。なので、自分の持っている知識や経験でよければ、これからも皆さんに提供していきたいです。 |
坂口 | 自らの表現方法やスタイルが確立されることや、ただ人に見てもらえればいいということではなく、他の人にもいろいろな表現や創作を楽しんでもらいたい。そういったことを、クリエイター自身が求めているって本当に素敵なことですね。 |
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ななみ雪 | また、新しい人がピクセルアートのコミュニティに入ってくることは、私にとってもいい刺激になっていて。いつも他のアーティストの方の作品を見ながら、「こんな描き方もあるんだ!」と表現の方法などを学んでいます。 |
アートっていろんなスタイルがあるから面白い。だからこそ、より多くの人にピクセルアートの世界に参加してもらい、それぞれの感性で作品を生み出してもらいたくて。お互いに影響し合えるコミュニティって理想的ですよね。 |
- ななみ雪
- Interviewer: 坂口元邦 the PIXEL代表。SHIBUYA PIXEL ART実行委員会発起人。18歳で渡米し、大学では美術・建築を専攻する傍ら、空間アーティストとして活動。帰国後は、広告業界で企業のマーケティングおよびプロモーション活動を支援。ゲーム文化から発展した「ピクセルアート」に魅了され、2017年に「SHIBUYA PIXEL ART」を渋谷で立ち上げた。現在は、ピクセルアーティストの発掘・育成・支援をライフワークにしながら、「現代の浮世絵」としてのピクセルアートの保管や研究を行う「ピクセルアートミュージアム」を渋谷に構想している。